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これまでの日本企業には見られなかった積極的なCSR事業を展開するユニクロ。

そのCSR部からシェルバ英子さんをゲストに迎え、特別講座を開催しました。

 

第一部では、世界的な展開を見せるユニクロのCSR事業の特徴や、東日本大震災への支援の裏側など、現場で活躍するシェルバさんから臨場感あふれるお話を伺うことが出来ました。

→第2部:対談へ

IVY Social School Volume1 『企業とNGOの進化するパートナーシップ』

日 時:2012年1215日(土)1830-2030

会 場:エル・パーク仙台 セミナーホール

参加者:52名

ゲスト:シェルバ 英子氏

株式会社ユニクロCSR部ソーシャルイノベーションチームリーダ

 

大学卒業後、外資系アパレルを経て、2001年、株式会社ファーストリテイリング入社。
以来、社会貢献活動を担当し、全商品リサイクル活動をはじめとする国内外の社会貢献活動を推進
2006年、立教大学大学院21世紀社会デザイン学科卒業。2010年からはユニクロ ソーシャルビジネス バングラディッシュリミテッド プランニング・コミュニケーションも兼任。

ユニクロのCSRは「現場主義」

 はじめに,ユニクロとそのCSR活動について概要をご説明いたします。

 

 我々の会社は、持ち株会社としてファーストリテーリングというグループ会社があり、その傘下にユニクロやGUなど、いくつかアパレルブランドがあります。

 

 ファーストリテーリンググループは「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」というステートメントのもと,ビジネスを展開しています。例えばヒートテックとか、ウルトラライトダウンとか、ブラトップという機能性の高い商品がありますが、こういった商品をいかにリーズナブルな価格で作り、皆さんに満足を提供できるか、ということを追及しています。CSR活動も同様のステートメントに沿って活動をしています。

 

 私たちのビジョンは非常にシンプルで、「世界を良い方向に変えていくこと」。それにはいろいろな方法がありますが、我々は服の会社ですので、服のビジネスを通じて世界を良い方向に変えていく。服は単におしゃれや自己表現のためだけのものではなく、世界を変える力を持っているということを,私たちはCSR活動を通じて気付きました。

 

 そして「現場、現実、現物」に基づいた活動ということ。我々のビジネスはやはりお客様に近い商売で,BtoBではなくてBtoCです。お店という現場があって、そこで起きている様々な課題を解決していく。CSR活動も同じで、現場主義です。単に寄付をするのではなく、実際に現場がどうなっているのか、現場を見て、現実を元に解決すべきことは何かということを考えて、実行していくことが大事だと考えています。

 

 次に、我々の特徴的なCSR活動をいくつかご紹介します。

 

 2006年からユニクロでは全商品リサイクル活動を行なっています。お客様に着なくなった服を店頭に持ってきていただいて、リユースできるもの、リサイクルできるものに選別し、最終的に服が足りない国に届けるという活動です。

 

 ここに「600,000,000枚」という数字があります。

 これはユニクロが年間で販売している服の数です。全世界で6億枚の服を販売しているわけです。これだけの数を生産し販売していると、環境に大きな影響をかけています。であれば,やはり会社としての責任があるだろうということで、リサイクル活動を始めたわけです。

 

 次に、「ドイツ70%、日本10%未満」という数字があります。

 これは衣料品の回収・リサイクルの率です。ドイツは環境先進国で、30年前から国を挙げてリサイクルに取り組んでいて、町中には衣料回収ボックスが置いてあります。いらなくなった衣料をリサイクルして発展途上国に送ったり、リユースしてまた使ったりと、国を挙げて推進しています。一方日本は、繊維に関するリサイクル法がしっかりあるわけではなく、回収も、民間・自治体でまちまちです。そこで、我々がリサイクル活動することで、回収・リサイクル・リユース率が上がっていけば良いなと考えているわけです。

 

 2006年から活動を開始して、今まで衣料を届けた国は26まで増えています。これまで1,380万着集まって、実際に寄贈したのは520万着。数字が乖離しているのは、備蓄の分です。神戸に倉庫があって、緊急の際に送る場合や、冬物・夏物でニーズが異なる場合もあるので、ある程度の備蓄を持ちながら要請に合わせて服を送る仕組みとなっています。

 

 ユニクロは日本だけではなく、イギリス、フランス、アメリカ、シンガポール、韓国、中国、香港、台湾の8ケ国にも店舗があり、リサイクル活動は同じように行なっています。その中で日本のお客様は、コンディションが良い状態で持ってきていただける方が多く、9割位がリユース出来ます。

 

 衣料支援はいろいろな課題があります。単に物を届けて終わりではなく、現地での転売、盗難、繊維産業への影響などへの配慮も必要になります。緊急支援の場合には空輸もありますが、基本は船便で届けます。物が届くタイミングで人も現地入りし、実際の受け渡しに同行します。そして定期的に現地を訪問して、モニタリングする仕組みも取っています。

 

 また服は、気候、文化や宗教によってニーズも様々。そのニーズに合わせた支援が鉄則です。例えばイスラム圏の女性だと、スカートは着ませんとか体にあまりフィットする物は避けてほしいということがあります。そのニーズに応えるには、信頼のおける国際機関とのパートナーシップが非常に重要。彼らが事前に把握した情報を元に支援を行う、という段取りを取っています。調査の結果、場合によっては支援できないという判断もあります。

 

 実際に服がどのように届けられるかというと、なるべく効率的に一度にたくさん送れるように、圧縮機で500枚位をまとめ、50キロと100キロの2種類のかたまりにして、現地に送ります。大きいかたまりで送るのは、盗難防止にも役立ちます。かなり頑丈に送って盗まれたりしない配慮をしています。

 

 先ほど信頼のおける国際機関との連携というお話をしましたが、連携先としては、UNHCR、ジョイセフ、あとは日本救援衣料センターという日本から物資を送るときのロジ面を担当している大阪にあるNGOなどです。海外だとパリのサムソーシャル、イギリスのセンターポイントというホームレス支援団体があります。こういった国連機関やNGOとの連携によって、現地のニーズをしっかり知った上で活動を進めています。